ガレージのある家 建築家作品集  遊び場がそのまま住まいにもなった。 題して”ガレージしかない家!?”
株式会社ネコ・パブリッシング発行 GARAGE LIFE 特別編集”ガレージのある家 Vol 13”より


ジョリーパッド仕上げの建物外壁には、正面出入り口のデッキにコーディネイトさせたレッドシダー材が化粧板として張られ、建物裾のイスラムタイルと相俟って店舗のようなお洒落な雰囲気を醸している。
2階のリビング・ダイニングは、東南面に設けられた大きなガラス窓から自然光が限りなく降り注ぐ。キッチンにディスプレイされている絵皿(バレンシア)がさり気なくアイデンティティを主張しているようだ。画面右手のハシゴは、リビング・スペースの半分以上の面積を誇るロフトへと昇り降りをするためのもの。

「紺屋の白袴」という諺がある。
人のことは色々と世話を焼くものの、自分のことにまでは手が回らない様子を指したもので、紺屋(染め物屋)は染める事を仕事としているのに、自分は忙しくて白い袴を穿いたままでいる…ことからきているらしい。その伝で言うならば、皆さんは「建築家が建てる自邸」に興味を抱くかもしれない。 施主の希望を反映した多様な家を手掛ける建築家が、果たして自身の家を考えた時にどういった家をカタチにするのだろうか…と。

「僕はこれまで、1000~2000万円台で建つ“身の丈サイズ”の家を多く手掛けてきました。それは、極く普通のサラリーマンが自分の所得で夢を叶えることが可能な金額だからです。良い意味での“分相応”なんですよ」。そう仰るのは、潟Xタッフの大内巌さんだ。

確かに、家作りは莫大な金額を必要とする人生の一大事業だが、金額に比例して良い家が出来るとは決して限らないと、大内さんはことある毎に力説する。
「例え1000万円台であっても、住まい手の生活スタイルや趣味をしっかりと反映させ、サポートし得る家ならば、それが良い家なのだ」と。
“良い家”に対する考え方や価値観は人それぞれであり、工法や使用材料などにも関連する話なので全ての考え方を集約したひとつの答えは出せようもないが、「引き渡し後に、施主のご家族全員が満足して笑顔になれる家」が良い家であると大内さんは信じている。

「高校時代にシーボニア(油壺にあるヨットハーバーの老舗)でアルバイトしていたので、ここ三浦界隈は僕の庭のようなもの(笑)。なので行く行くは三浦に住まいを構えたいと思っていたところ、たまたま油壺の土地の売り話が舞い込んできた。道路沿いの角地で20 数坪(笑)」 その土地を昨年の春先に入手し、実測したところ30 坪にあと少しの29坪。ちょっと得したと大内さんは笑う。
少ない坪数の敷地に個性的な家を建てるのは大内さんの得意技。これまでに手掛けてきた多くの物件の良いところをギュッと濃縮したかのようなプランを考え出して着工に取り掛かったのは昨年の夏だった。

「この本は『ガレージのある家』だけど、僕が作りたかったのは“ガレージしかない家(笑)”。好きなクルマをガレージに収めて、それを眺めながらお酒が飲めれば幸せ!というプランですよ。
クルマ好きや趣味の仲間連中が集まってワイワイやれて、遅くなったら皆が泊まってゆける家。

「寝る場所とキッチン、そしてお風呂があれば、あとは何も要りませんね(笑)」
割り切りの美学…とでも言おうか、必要なものに優先順位を付け、不必要なものは潔く切り捨てて完成した家は、大内さんにとって丸々居心地の良い空間となった。

訊けば、ガレージは絶対に譲れないものとして第一位かと思いきや、1.8m もの張り出しを持つウッドデッキにそのまま繋がる広々としたバスルームと、そこに設置したジェットバスが一位。
風呂に浸かることがオンオフの切り替えとなる大内さんならではの一位だ。そして二位三位は、ガレージと溜まり場としてのリビングルーム。

いや、たまり場は全長5m以上のマスタングがスルリと収まるガレージの一角にも用意されており、建物北側の道路に面して作られたテラスからそのままアクセスすることが出来る玄関部分が洒落たバーカウンターとなってもいるのだ。
この一角は道路から良く見えるため、建築工事中は近隣の住人から「カフェが出来るらしい」と思われていた由。

そんな “遊び”が大内流・家づくりのエッセンス、「夏場にね、間違ってお客さんが入ってきたりしたら大成功(笑)」と悪戯っ気たっぷりだ。
30坪未満の敷地ながら、割り切りと設計力とで敷地面積を全く感じさせない家。
自邸をモデルハウスとして既にお客様にも披露し、家に対する自説を熱弁してもいる“紺屋の”大内さん。彼の袴は白ではなく、多彩な七色袴に違いない。

Owner’s CHECK 06 ARCHITECTURE FILE 大内邸/ 神奈川県


自分の家ココがお気に入り

広いガレージ及びバースペース、そしてカフェのようなテラス、休日を楽しむ露天風呂感覚のジャグジー。
さらに静粛性が抜群のレムコ特注オーバースライダー。オリジナルデザインのアイランド・キッチンも気に入っています。


自分の家、ココがちょっと失敗

今のところはありません。


読者へのアドバイス

売れる!という理由でビルトインガレージハウスを造る会社よりも、クルマや趣味生活を本当に理解してくれる設計士や建設会社に必ず依頼すべきです。困ったら、この雑誌を参考にすると良いでしょう!!


建築家から一言

育った環境、世代、家族構成、趣味などによってライフスタイルはさまざまです。
何十年も何千万円もローンを支払うのに妥協してもらいたくはありません。確かに、予算を掛ければ良い住宅を手に入れやすいですが、見栄を張らずに分相応の楽しみ方はあるはずです。我慢出来ることは極力抑え、その代わり「ここだけは引けない!」というモノにこだわりを持ってもらいたいですね。
新建材を抑え、いずれは土と灰になる自然素材を使用して、太陽光発電とオール電化を充実させ、高気密住宅にすることで省エネを楽しみ、安全を確保し環境に貢献する…。
そんな秘密基地をこれからも創り続けます。ガレージライフは、決してお金持ちだけの楽しみではありません!

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プランニングデータ
所在地: 神奈川県
施主: 大内 巌さん
構造: 木造軸組2階建て
敷地面積: 90.91 u
延床面積: 72.40 u
ガレージ面積: 26.60 u
収容車輌: 1964年式ウーズレー・ホーネット
  1973年式フォード・マスタング Mach1